「世界一わかりやすくデザイン経営を語ろう」
Report on “The most friendly design management” event in Hachinohe
先日、青森県八戸市にある“畳みのセミナー会場”で有名な南部会館にて「世界一わかりやすくデザイン経営について語ろう」(美崎栄一郎著者10周年イベント 於八戸市にある南部会館)の第1部を登壇させて頂きました。
第2部は著者10周年記念で月代わりで全国を講演されている美崎さん、3部はご参加の皆さんとのクロストークという構成です。
美崎さんのお話はもちろん、ディスカッションタイムがとても示唆に富んでいてなるほどと思ったことがたくさんあったので、当日のスライドと一緒に共有します。
世界一わかりやすくデザイン経営について語ろう(update版)
https://app.box.com/s/jdqxhu2qkml9xaal0bhd6mqibxo34c2k
「デザイン経営」とは
今回のデザイントークは、2018年5月に提言された「デザイン経営宣言」 の紹介から。
「デザイン経営」とは、
デザインを企業価値向上のための
重要な経営資源として活用する経営である。
ーデザイン経営宣言よりー
私たちデザイナーやデザインコンサルタントであれば「ふむふむ、そうだそうだ」となりますが、多くの一般職の方にとっては「デザインを活用する」ということが実際に何を示すのかが実感しづらく、難解さが勝るようでした。
で、これをもっと、身近な話にしてざっくばらんに話そうよ、と言うのが今回の私のパートになります。
「デザイン経営宣言」の中でもきわだって特徴的なことは「デザイン投資」の重要性に対して強く言及していることです。
企業や投資家がデザインに積極的に投資してくださるのはとても喜ばしいことですね。ちなみに、拙著『売れるデザインのしくみ』の帯には
デザインは未来への投資である
と書いてあります。デザイン投資にはもちろん大賛成です(デザイナーの皆さんも嬉しいですよね)。
一方で、デザイン投資がイコールデザイン経営なのか、と言われると疑問が残ります。
特に「マーケティングにもデザインにも力を入れているのに、なぜか売り上げが落ちている…!?」という現象については、一つ前のエントリー
マーケティングからのデザインと「デザインマーケティング」の違いhttps://medium.com/@UJITOMO/a6dd780e32fc
でも解説しています。
では、売れるデザイン(売れ線)を売ろうすること以外に、どうしたら成功するデザイン経営へ、売れるしくみに拡がるのでしょうか。
ちなみに会場となった八戸市には「八戸ポータルミュージアム はっち」「マチニワ」「八戸ブックセンター」など、ここは代官山だったっけかな?と思うような洗練された施設やショップをあちこちにみかけます。
たとえば、こちら、「八戸ブックセンター」のロゴ入りトートバッグ。「八」の文字が本になっていて、とてもオシャレですね。
出張族なので、日本全国の豪華な蔦屋さんやおしゃれスタバにはお世話になりっぱなしなのですが、自分たちがブランドのライセンスを持っていてショップを展開するのと、全国にチェーン展開されるブランドあるいはライセンシーとの提携でショップが街にできるのと、どちらが本来的に収益性の高いビジネスモデルでしょうか。
街が自ら自分たちのブランドの書店を持ち、ロゴグッズを販売する……
八戸もまさにデザイン経営を実践する都市、デザインシティなのです。
さて、デザインシティといえば、ここ最近、仕事仲間やSNSなどで「エストニアのデザインシステム」のことが話題になっていました。
「ブランディング=ロゴ制作じゃない」電子国家エストニアを構築したデザインプロセス
「ブランディングの本質はコアメッセージの策定にあるけれど、やはり写真、動画、そしてロゴやアイコンなどのビジュアルが持つ影響力は計り知れない。コアメッセージを最大限に浸透させる手段として、ぼくらはToolbox Estoniaというプラットフォームを立ち上げることを決めたんだ」とアラリはその決断の背景を明かす。
ちなみに、エストニアのデザインシステムはこちらですが、
Brand Estonia
https://brand.estonia.ee/
小さな労力で、かつ後発にも関わらず、国のブランディングとして(少なくとも好感度や認知度、移住対象、観光価値なども)成果が上がっていることは明らかです。
ほかに、オランダのアムステルダムも「デザインシティ」としてよく名前があがります。古い町並みとデザイン性の高い目を引く建築物が「混在」ではなく、「しっかりと共存」しているようにも見えます(近々行ってきます)。
オランダは公共施設の建築費の5%をアートに使いましょう、と言うルールもあるのだそう。ちなみにアムステルダムは街自体がユネスコの世界遺産。なるほど納得です。
昨年はたまたま、観光の仕事を普段よりもたくさんさせていただいたこともあり、世界中の成功している企業や都市を研究する機会に恵まれたのですが、それらの多くがデザイン思考やデザインシステムをすでに取り入れており、まさにデザイン経営の実践版、成功事例と言えるとおもいました。
デザインというと独創的な形の製品というイメージが強いですが、都市や国づくりなど「計画性と創造性の二つが同時に必要となるもの」にこそ、デザイン経営はその強みを発揮するのではないでしょうか。
と、いうことで、ざっくり「デザイン経営とは?」・・・
デザイン経営とは
「デザイン思考」や
「デザインシステム」
を経営にとりいれて使うこと
と言い換えられると発表しました。
ただ、残念ながら「デザイン経営」の「デザイン」がそもそも何を指すのかわからないのに、「デザイン思考」と「デザインシステム」と言う言葉を使ってしまったら、全く説明になっていないよ?w
とビシッとしたツッコミをいただきまして、
公開しているスライドには「デザイン」という言葉を使わないで説明するupdateバージョンが載せてあります。よかったら見てみてくださいね。
第2部では主催の美崎栄一郎さんが「さらにもっと身近なデザイン経営」と言う趣旨で、まずは言葉のデザインの話からスタート。
つかみは「熟女」のお話でした(笑)。
そのあと「かっこよくないデザインかもしれないけど明らかにめっちゃ成功しているデザイン経営」の事例や「やっぱりすごい今治タオルのライセスビジネス」「オランダのチューリップバブルとフェルメールが誕生した理由」などなど、「え、デザインなの?」と言う面白いお話をたくさんしてくださいまして、大変に勉強になりました。
美崎さんは今、全国、回られているそうなので、もしも講演に行かれたら「熟女とチューリップと十字架のお話しもしてください」とリクエストされることをお勧めします。(次回は3月2日福岡だそうです)
さて、その紛れもなく、今やジャパンブランドの成功事例となった「タオル美術館」には、ちょうど昨年、視察にお伺いしておりまして、今治のの歴史や取り組みなども楽しく見学してきました。
成功している地方都市で感じた(デザイン視点)「7つのキーワード」https://medium.com/@UJITOMO/9F-50fa1f6b5d4f
この、今治タオルブランドにおいては、ブランドの知財=ライセンス使用料(今治タオルブランドのロゴ使用料)により長期的・安定的に収益が上がるしくみがなんと言っても素晴らしいですし、
デザイン経営において強くコミットすべきは、投資単体というよりも、デザイン投資含めてライセンシーとファイナンシャルなのかなぁという気もします(専門から少し遠いので控えめに書きますが・・・)。
お忙しい中、ご参加いただいた青森を拠点に活躍されるデザイナーさん(なりたまさみさん)からも鋭いご指摘をいただいたのですが、
デザイン経営=「デザイン思考」×「デザインシステム」×「ライセンシー(知財)」の方が正しいかもしれませんね。
ご存じの通り、ロゴをデザインされたのは、同窓の多摩美術大学卒(学年は違います)の超著名デザイナー佐藤可士和さんですが、今治タオルの成功事例は、まだまだ「日本中に眠る良いもの」を世界中にかつ当事者に大きな利益をもたらしつつ届けるチャンスが存在することを教えてくれます。
これからのブランドコーディネーター、ブランドプロデューサーという職種の人たちは、今治タオルの成功ように「生産者、ライセンサー、ライセンス使用者(ブランドライセンスを使用してビジネスを営む人)、関わったクリエイターも全てが成長とともに恩恵を受けるファイナンシャルプランナーのようでなければいけないなぁと感じました。
もしも、デザインとかブランドとかかっこいいことを口で言う割に人にばかり投資させて(リスクを負わせて)、公平な利益配分が行われないプロジェクトがあったとしたら……
それは間違いなくデザイン経営ではないですね(・・・速やかに離脱しましょう!)
経営に
「定説にとらわれない自由な発想や独創的な意匠」※1
「合理的かつ一貫性のあるしくみ」※2
を取り入れて生かすこと
※1”自由な発想や独創的な意匠”「デザインおよびデザイン思考」を指す※2”合理的かつ一貫性のあるしくみ”「デザインシステム」を指す
翌日、ワカサギ釣りに連れて行っていただきました。これもすごく楽しかったので、また、別の機会に紹介しますね。
それでは、今日から鹿児島に行ってきます!
【世界一わかりやすくデザイン経営について話そう(協力・協賛)】
八戸経済新聞
https://hachinohe.keizai.biz/
カネイリミュージアムショップ
http://www.kaneiri.co.jp/shop/
ご参加いただいた皆さん、関係者の皆様、お疲れさまでした。ありがとうございました。