
ロゴデザインの基本 (28 Success factors of brand mark design)
六本木AXIS内にあるJIDA(日本インダストリアルデザイナー協会)で学生、若手デザイナーを対象にしたスキルアップセミナーの講師を務めさせていただきました。
第2回JIDA塾~ロゴデザインの基本~
https://www.jida.or.jp/site/information/jidajuku02.html

前回のロゴエントリーとかぶるところもありますが、
・ロゴデザイン、22の確認すべき大事なこと →制作途中のチェック
・ロゴデザインの基本→作り始める前にざっくり呼んでおく
というスタンスだとわかりやすいかもしれません。
ロゴってなんだっけ?
日本では、何かのタイアップや〇〇周年など一次的なイベントの際に使われる(キャンペーン)マークや番組タイトル(デザイン)のことをよく「ロゴ」といいます。
私もまだ若い会社員デザイナー時代「宇治ちゃん、〇〇のロゴ作っといてー」と営業さんや上司から軽い社内業務的によく頼まれていまして、おかげさまで若い時からとてもたくさんのロゴを作らせてもらいました。
ところが、今になって思えばですが、あの当時たくさん作ったと思っていたはずのロゴのほとんどは「機能名称訴求マーク」や「何かしらのタイトルデザイン」だったような気も・・・。
一方、グローバルな視点で「ロゴ」といえば、ほぼ「ブランドマーク」のことを言います。
プロモーションタイトル、新機能訴求マーク、〇〇周年記念マーク、番組タイトルのデザインなどは「ロゴ」とはあまり言いません。
参考:あのロゴ、このロゴ、お値段はいくら?|ギズモードジャパンhttps://www.gizmodo.jp/2012/08/post_10721.html
上記は、ネット上で多くシェアされていたナショナルブランドロゴの値段にまつわる記事です。皆さんも一度くらい目にしたことのある記事ではないでしょうか。
ということで、この記事も「(ブランド)ロゴの基本」になっています。
(※また掲載しているデザインサンプルはセミナー時は様々でしたが、なるべく自社実績に差し替えています。)
ロゴの「名称」と「役割」
5年ほど前に出版された拙著『伝わるロゴの基本』にも同じ記載がありますが、日本ではシンボルマークとロゴタイプの組み合わせを一般的に「ロゴ(マーク)」と呼んでいます。

先日のJIDA塾では、ここでさっそく意地悪なクイズをだしました。
「Facebook使ってる人?」
「はーい」(半数以上が挙手)
「ところで、Facebookの[F]マークはなんていう名前かな?」
「シンボルマーク!」
「と、思いますよね、ところが、答えはノーです」
「ええー」
シンボル+ロゴタイプがロゴマークで、Fはシンボルなのでは・・・と、この流れでは上記のように考えるのはごく普通のことなのですが
Facebookのガイドラインによると
アイコンに使っている「F」マークを「Fロゴ」
タイポグラフィーによる「Facebook」ロゴは「ワードマーク」
と呼んでいます。

参考:Facebook Brand Resource
フェイスブックブランドリソースセンター
https://ja.facebookbrand.com/
https://ja.facebookbrand.com/assets
公開されているガイドラインの内容をみれば一目瞭然ですが、「いいねロゴ」をはじめ、サービスに使用されるアイコンやマークのようなものがたくさんあるので、大ざっぱな呼称をなるべく避けているのですね。
なぜ、ロゴと呼ばないのか
自社ロゴのことを「Brand Mark」(ブランドマーク)と呼ぶ企業やブランドは実はほかにもたくさんあります。
参考:Mastercard Brand Mark Guidelines
(マスターカードブランドマークガイドライン)>>Brand Markを使用
https://brand.mastercard.com/brandcenter/mastercard-brand-mark.html
もそうですし、
もそうです。検索するとたくさん出てきます。
こちらのブログ(Medium)もシンボルは「モノグラム」、ロゴタイプは「ワードマーク」という言い方をしていますね。
参考:Medium Branding Guidelines
(メディウム ブランドガイドライン)>>Word Mark,Monogramを使用
https://medium.design/logos-and-brand-guidelines-f1a01a733592
ここは、セミナーでも強調したところですが、ロゴそれ自体がそもそも使う人のためにあるわけですから、デザインする人にとって大事なことは
「ロゴを使う人の都合に合わせて、使いやすいものを作る」ということです。
初学者の人に気をつけて欲しいのは「かっこいいロゴ」「正しいロゴ」を作ろうとするあまり、ユーザーの使い勝手やビジネスの課題がおざなりになってしまうこと。
ロゴは作って終わりではなく、作った後にたくさん使われることに意味があります。
闇雲に案を出すだけでなく、ロゴがどんなシーンで使われるのかを想定しながらデザインしていきましょう。

ロゴの大事な役割7つ
そのあと、ロゴの役割と題して、7つのポイントをおさらいしました。

1〜6の解説はもちろん、採用向けにあるいはトップの世代交代などがあり社員の意識改革にデザインリニューアルを行う事例などもセミナーではお話ししたのですが、
最近ではむしろ「ロゴのそれ単体」の機能だけでなく、ブランドのデザイン全ての全体戦略としてBI(Brand Identity Design)、あるいは企業理念の可視化および実装のためのデザインシステムとしてCI(Corpolate Identity Design) が注目されています。事業会社や大手企業では、デザインの成功がビジネスの成功に大きく左右していまうからですね。
会場にはたぶんですが事業会社さんにお勤めで、普段はロゴを作らないけれども「自分でロゴを作ることになったので勉強しなきゃ」というUXデザイナーさんもいらっしゃいました。(がんばって良いロゴをデザインしてくださいね!)
良いロゴ、悪いロゴ -スマホ時代の新基準-
ということで、良いロゴと悪いロゴのお話です。
スマホ決済や言葉の壁を超えた手軽なタクシーライドで、旅行者やビジネスパーソンに人気の「Uber」のロゴリニューアル事例です。
2016年にリブランディングをしたものの「Uberの新しいロゴだとわからない!」という事態が発生し、
(参考)Uberが新ロゴを公開するも、「U」でないことに人々が困惑
https://digiday.jp/brands/uber-unexpectedly-revealed-new-logo-confusing-everyone/
経営体制の刷新などもあったかと思いますが(ロゴの役割の7番)、先日3度目のリブランディングを発表しました。
(参考)Uber Design
https://www.uber.design/

視認性に優れたオリジナルフォントでつくられた新しい「Uber」ロゴは、読みやすく認識しやすいので、iPhoneのデスクトップでもう迷子になることはないでしょう。ロゴのデザインにとって、視認性は個性や美しさよりも上位にあります。
死んでいるロゴの特徴7つ

Uberのロゴリニュールの失敗は典型的な1番目。また、最初のロゴからの脈絡のない変更からくる違和感からか、「ユーザーからあまり愛されていなかった(死んでいるロゴの7番)」というのも、3度目のリニューアルが早まった原因と考えられます。
最近ニュースになったロゴのリニューアルから
(参考)バーバリーのインスタグラムhttps://www.instagram.com/burberry/
https://www.instagram.com/p/Bl-VwDsHVvP/
(参考)セリーヌのロゴをエディ・スリマンが新しくした|GQ
https://gqjapan.jp/fashion/news/20180904/celine-new-logo-by-hedi-slimane
(参考)Donuts is Out | Brand New
http://ow.ly/M8Vo30mxHoI

どれも読みやすくわかりやすい、小さな画額でも映えるシンプルなデザインへと改善されてますね。
ロゴのリニューアルのトレンド7つ

ロゴが変わったことを動画やストーリーで丁寧に伝える企業も数多くあります。
Audi CI
https://www.audi.com/ci/en/renewed-brand.html

イメージを多用して人の感情に訴えながら、「Digital First」の理念と効率的なデザインシステムの実装について詳しく解説されています。ロゴマニュアルから、デザインシステムへの変化が実感できます。
「キーカラーからカラーパレット(ロゴリニューアルのポイントの3番)」への変化についての質問もありました。
参考にお見せしたのはこちらです。
防府市幸せますブランド
https://design.hofu.io/
https://design.hofu.io/#color

キーカラーは「幸せますピンク」と決まっているけれども、サイトを作成したり、事業者を支援したり、デザインする機会は様々です。
むしろ、捕色や差し色を使用することで、キーカラーが映えるという効果もあります。

また、デザインガイドラインを使用すれば、新しい事業支援にも、限られた予算や時間で、親和性の高いロゴを開発できます。
こちらの「多幸窯」のロゴは、廃窯になった登り窯に後継者ができて、プロジェクト支援した際に開発したロゴです。本来、ロゴフォントやカラーのデザイン提案は複数案行いますが、シンボルマークの形状以外「ガイドラインに沿った」提案をしたために、とてもスピーディに開発を進めることができました。


あと、繰り返しになりますが、やはり、グッズになった時によく見えるというのはとても大切です。
A4の紙にたくさんデザインするのはいいことですが、会議室の机の上でデザインを決めると後になって予測していなかったことが起きる場合もあります。現場の人が「これ使える」「あってよかった」と助かるものをデザインしておくといいですね。


起業家のためのロゴデザインのポイント7つ
一言でロゴデザインといっても「もともとロゴがあってリニューアルする場合」と「事業のスタート共にロゴを開発する場合」は少し事情が異なります。
なぜならデザインで解決するべき課題が異なるからです。

前にお見せしたダンキンドーナツのムービーもそうですが、カップなどにうまく収まってくれると、最近では、ユーザーがわざわざブランドのロゴをInstagramで宣伝してくれて広まるという可能性もあります(ロゴの役割の6番)。
Blue Bottle Coffeの公式アカウントでは、このようにファンを鼓舞する構図を数多く投稿し、バズのリーダーシップをとっています。
https://www.instagram.com/p/Birn_JkAW7E/

以前、ロゴを作成する際にはショッピングバッグテストをいうのを欠かさずにやっていましたが、最近ではペーパーカップテスト(手に持ったカップのロゴ未見栄えの良し悪し)も行うようにしています。
持ちたくなる、撮りたくなるようなデザインに仕上げておくことは重要ですね。
ユーザーの自己実現をデザインで実現している企業は少なくありません。「コトラーのマーケティング4.0」も、課題図書として示しておきました。
実際にコーヒーブランドの立ち上げのお手伝いもしていまして、そちらについては、ロゴのデザインで「ポジショニング」を意識したディレクションで、「世界観」が変わるというお話をしました。
(サンプルは実際にあった案件のボツ案同士の比較)



どのデザインがいいか、という問題とは別に「どのデザインがふさわしいか(事業ビジョンとのマッチ)」「どの方向性を目指すべきか(こっちは違うをきちんと決める)」という判断もとても重要です。
デザイナーは少なくとも企業の「ビジョンが感じ取れるロゴのデザイン」にしようというお話もしました。(コーヒーアントレプレナー案件では、実際には最も「Coolなデザイン」が採用されました)


セミナーの冒頭で「質疑応答で質問するのは恥ずかしい人はツイッターで」と伝えてみたものの、講義中から懇親会まで途切れることなく、たくさんの質問をいただきました。熱量が高い参加者の皆さんのおかげでやりがいがありました。皆さん、ありがとうございました。


今回お世話になりましたJIDA塾の主催者団体であるJIDA(日本インダストリアルデザイナー協会)では、意欲的にデザインを学ぶ学生メンバーを募集中だそうです。
主な活動の一つに教育委員会というのがあるのですね。
JIDA 主な活動(センター委員会)
- デザインミュージアム委員会
貴重なデザイン資産を次世代に継承する
JIDAデザインミュージアムのサイトへ - スタンダード委員会
研究活動をベースにした、デザイナーの実践に役立つ情報とツールの提供
スタンダード委員会のサイトへ - 職能委員会
創作および創作の保護と事業環境の整備 - 教育委員会
デザイン学生の学修を支援し、教育とデザイン現場を結ぶ活動
PD検定のサイトへ - インハウス委員会
社会視点からの異業種機会提供
JIDAインハウス女性デザイナー研究会活動報告 - 渉外委員会
国際交流と日本のデザイン力の発信 - ビジョン委員会
インダストリアルデザインのプロフェッショナリズムを考える
Webマガジン:JIDA連続フォーラム
http://www.jida.or.jp/site/activity.html
くわしくはサイトをどうぞ。
主催してくださいました皆様、ご参加くださった皆さんもありがとうございました。
なかなかエントリーをまとめる時間が取れないのですが、是非、次回は、作ってからのチェックというところ(ガチでグラフィックデザイン)などもまとめていくようにしたいですね。
以下は(古い本が多いですが)上記のコンテンツのヒントも詳しく記載されていますのでよかったらどうぞ。
デザインシステムの導入と老舗のロゴリニューアルについて書いた本
『生まれ変わるデザイン -持続と継続のためのブランドデザイン-』
ポジショニングとトーン・アンド・マナーからブランドデザインのディレクションを学ぶ本
『売れるデザインのしくみ-トーン・アンド・マナーで魅せるブランドデザイン』
ロゴ開発における基本とデザインテストの実例紹介など
『伝わるロゴのしくみ -トーン・アンド・マナーで作るブランドデザイン』
デザインをビジュアルマーケティング戦略と捉え活用する実践書
『問題解決の新しい武器になる視覚マーケティング戦略』
「SNSのアイコンは大事」身近な生活の中で活用できるデザイン戦略の話とブランドデザインの基礎知識
『デザインセンスを身につける』
UJIPUBLICITYのデザインショーケース
https://www.uji-publicity.com/showcase/